創造主
空き地を描きたいと思った。
そのとき、
駅前にずっとあったはずの空き地が突然目に入り、カメラのシャッターをきる。
数日後、絵を描くためにもう少し状況を把握したいと出かけるが
既にその空き地はなかった。
工事が始まっていたのだ。
私がぼんやり思い浮かぶものは
抜群の偶然性を持って現れ、瞬時に消えていく
実に刹那的である。
突然、
自分は創造主なのではないかと錯覚する。
そして、
私だけではなく、
頭の中で考えることができる全ての生物が
創造の主であると思う。
ぼんやりと思いついたものが
現実の世界に作り出されていく
昨日真っ白だった紙に
今日は風景が描かれている
描きたいと思う対象物を
自分が見たいように描く
1000人いたら1000通りの絵になる
私はそれを尊いと感じる。
絵でなくても、
料理でも
誰かのために発せられた言葉でも
抱きしめるという行為でも
意志を持って行われた創造物は
尊い。
大人になると意志を持つことはどんどん難しくなる。
本当にそうしたいと思って選択しているのか
他人の目や社会の目
バランスを意識して
自分の意志はいつしかぼんやりする
しかし、
ぼんやりでは創造しつくせないと思う
ディティールを詰めれば
創造と現実を限りなく一致させることができる
自分の中にすべての原型がある。
せっかくこの身体で生まれたのだから、
私としての創造物を
この人生で解放し尽くしたいと思う。